このような疑問があれば、この記事で解決!
その2:子どもの様々な行動の原因や理由が専門的な視点から知ることができる
その3:できない行動に対してどうしていけばいいのかがわかる
僕は発達障害児の療育歴3年。そしてこの記事は、5万部以上売れている『育てにくい子にはわけがある―感覚統合が教えてくれたもの』という書籍を参考にしています。
感覚統合とは感覚情報を「交通整理」する脳の働き
そもそも感覚統合とは??
「脳に流れ込んでくるさまざまな感覚情報を『交通整理する』脳のはたらき」
道路には「信号機」があり、赤・黄・青の色で交通の流れを切りかえています。
それと同じことが、私たちの「脳」のなかでも起きていると考えてください。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、さらに固有覚、平衡感覚という感覚がありますが、「どこを見るべきなのか」、「どの音が雑音なのか」、「いる情報」と「いらない情報」を瞬時に判断(=交通整理)しているということです。
授業中に、車の走る音や校庭で他の生徒が体育の授業で声を出している中でも、「いる情報」である先生の声に注意できるのは、それに「青信号」を出している「感覚統合」のおかげです。
窓ぎわのトットちゃんが授業中、窓の外のチンドン屋の音に耳がいってしまうのは、チンドン屋の音に「青信号」が点いているからと著者は例に出しています。
適切な「交通整理」が「適応行動」をつくりだす
トットちゃんが何度も先生に叱られたり、廊下に立たされてしまうのは何でも「青信号」になってしまうから。「交通整理(感覚統合)」がうまくいっていないからです。
ただそのとっとちゃんもトモエ学園で行われていた「リトミック(音楽に合わせて歩いたり走ったりする遊び)」をしたことにより、症状が緩和していきました。
感覚を統合していくことで、個性と呼べる範囲の「落ち着きのなさ」「おしゃべり」になったというお話です。ではその「感覚」ってなんなのでしょうか。
自覚しにくい!だから大切な3つの感覚
感覚と聞くと、5感を思い浮かべませんか?一つは正解です。
2、固有覚
3、平衡感覚
感覚統合の視点において大事な感覚はこの3つ。
姿勢や運動、動作、あるいは行動や態度をコントロールするために必要な感覚だからです。
「触覚」における原始系と識別系。2つのバランスが大切
その2:識別系
触覚とは…。
触覚は、全身の皮ふや粘膜に、そのセンサーがはりめぐらされている感覚なので、別名「表在感覚」ともいいます。かならずしも意識にのぼらない「触覚」の経路もあり、じっくりとみていくと、非常に興味深い感覚のひとつです。
感覚には、原始系と識別系の2つの役割があるのですが、触覚は特にはたらきの違いがはっきり出るためバランスが重要。
その1:原始的・本能的なはたらきの「原始系」
「原始・本能」と聞くと、どのような姿をイメージしますか?
考えるより先に「反射的に動いてしまう」姿が「原始・本能」です。例えば、赤ちゃん。
赤ちゃんは教えなくても唇に触れたものに吸い付こうとしたり、手のひらに指を当てると握ったりしますよね。吸てつ反射や把握反射と言われていますが、これも「原始系の触覚」によるはたらきです。
つまり、生きるために必要なはたらきが「原始系」になります。
その2:認知的・識別的なはたらきの「識別系」
「認知・識別」はどうでしょうか。
識別系とは…
知的な情報処理をする「触覚」のはたらき
① あなたのズボンのポケットの中にスマホ・鍵・財布が入っているとする
② ポケットの中に手を入れてスマホだけを取り出す
この時、わざわざポケットの中を覗き込んで探しましたか?
触っただけでスマホがどれかわかりますよね。
これが「識別系」の触覚のはたらきです。
この2つの役割のバランスが取れていないと行動に問題が出てきます。
2つの役割のアンバランスさは触覚防衛反応を引き起こす
識別系が育っていかないと原始系のはたらきが暴走し、本能的な行動が多くなります。このように原始系の反応が強く出てしまうことを「触覚防衛反応」といいます。
本来、原始系のはたらきは成長するにつれてブレーキがかかり、識別系が優位にはたらくように切り替わっていきます。
赤ちゃんの吸てつ反射や把握反射がなくなるのも識別系の発達によるものなのです。
このような姿を見たことはないでしょうか。
・ベタベタ、ヌルヌルしたものに触ろうとしない
・歯磨きや口拭きを嫌がる
・髪の毛や爪を切ろうとすると泣き叫んだり逃げ回ったりする
・帽子を被れない、あごひもはかけない
これらすべて、触覚防衛反応によるものです。
触覚防衛反応への対策方法は「識別系を育てること」
著者は「識別系」を育てる理由をこのように述べています。
皮ふから入ってくる触覚情報にきちんと「注意」を向けて、素材やかたち、大きさを「識別」する、こういう回路がきちんと育ってきたときに「原始系」の暴走に抑制がかかります。
そのため、遊びで識別系を育てていきましょう!
例えば、こんな遊び。
ボールプールで「見て!このボール!」とまずボールに注目させて、服の中にイン!
子どもがケラケラと笑い、「ボール服の中にイン!」するあそびを楽しんでいるようであれば効果的です。
ボールがだめなら、タオルや新聞紙なども療育施設では子どもに人気でしたよ。
他にはこんな遊び。
ベタベタした感覚が苦手な子と一緒にゼリーを使っておままごと。大好きなおままごとでゼリー屋さんをやったら、気にせずゼリーを触っていたこともありました。
遊びで識別系を育てていく際、注意点があります。
大切なのが、そのあそびをおもしろがってやっていること、触れているものにちゃんと「注意」が向いているかということ。
子どもが自分から触っていく場合でも、触ってもらうあそびをしている場合でも、そこに「能動的注意」が向いていることを確かめながら、あそびを展開していく必要があるということです。
決して、「慣れさせる」「我慢させる」「頑張らせる」という方法ではありません。触覚防衛反応はアレルギーと一緒。そばアレルギーの人に無理やり食べさせる人はいませんよね。
発達状況に見合った感覚刺激を使いながら「識別系を育てていく」ことを意識しましょう。
筋肉や関節にあるセンサーの「固有覚」
手足を自由に動かすときに必要な感覚が「固有覚」呼ばれています。
具体的な役割としては以下の2つ。
その2:筋肉に生じる張力の感知
聴覚や触覚とは違い、無意識に使っている感覚のためイメージが湧きにくいかと思います。
でも簡単それぞれの体験ができます。
① 誰かに手伝ってもらう
② 自分は目をつぶり、相手に左腕を持ってもらう
③ その左腕を自由にポージングしてもらう(例えばガッツポーズにピース)
④ 目を閉じた状態で反対の腕(右)を左腕と同じようにポーズする
図で説明するとこんな感じです。
いかがですか?おそらく正確にできたかと思います。
では、なぜできたのか!
- 肘が曲がった感覚がある
- 指が曲がった感覚がある
ではないでしょうか。
これが固有覚の1つ目の役割「関節の角度や動きを感知」する体験でした。
では続いて、「筋肉に生じる張力を感知」する体験です。
① 誰かに手伝ってもらう
② 自分は目をつぶり、手のひらを上に向けて両手を差し出す
③ 右手には5冊の本。左手には1冊の本。
④ さて、目をつぶったまま!どちらの方が重い?
では、なぜ重さを感じられたのか!
- 5冊の方がより力を入れた
ではないでしょうか。
つまり、力の入れ具合で重さを感じているんです。
これが固有覚の2つ目の役割「筋肉に生じる張力を感知」する体験でした。
固有覚が未発達だと、体の動きが「ぎこちない」「不器用」
ぎこちなさや不器用さが見られるのは、「力の入れ具合がわからない」という背景があります。
・「力の加減」がわからず、鉛筆の芯をよく折る
・食器を「そっと」置けない
決して、「やる気」がないわけでも、「ふざけている」わけでもなく、「ていねい」「力の加減」「そっと」という感覚がわからないのです。上のような様子があるときはまず「固有覚の未発達」を疑ってくださいね。
バランス感覚と呼ばれる「平衡感覚」。バランスを取るためだけの機能ではない
「平衡感覚」は、一般的にはバランス感覚などと呼ばれたりすることもあります。
綱渡りをイメージすると、しっくりくるのではないでしょうか。落ちないようバランスを取るために必要なのが平衡感覚です。
ただ!バランスを取る以外にも平衡感覚がないと困ることがあるんです。平衡感覚と密接な関係にあるのは4つ。
その2:眼球運動
その3:落ち着き
その4:自律神経
すべてを細かく説明すると長くなるため、簡潔にまとめます。
平衡感覚がうまく機能しないことにより、「机に伏せてしまう」「背もたれによりかかりがち」、「跳んできたボールを避けられない」、「危険とわからず高いところによく登る」「くるくるずっと回っている」などの症状が出てきます。
さらに、「ブランコは好きなのに、トランポリンが怖い」などが見られるのも平衡感覚が関係しています。
このように、バランス感覚だけに使われている感覚ではないので平衡感覚を統合していくのも重要になります。
育てにくさには「原因」と「理由」が必ずある
まとめます。
感覚統合で大切になってくる感覚は3つ。
2 固有覚
3 平衡感覚
これらの感覚がうまく育っていかないと、「靴下を履くのを嫌がる」、「コップに水をうまく注げない」、「ブランコは好きなのにトランポリンは怖がる」というような姿が出てきます。
「なんでできないんだろう」
その答えは感覚の未発達にあるかもしれません。そんなとき、3つの感覚に基づいて「原因」や「理由」を探ってみましょう!きっと支援の方向性が見えてくると思います。
そして、発達を促すときは「我慢させる」「慣れさせる」「頑張らせる」でもなく、「たのしい!」が感じられるアプローチを心がけてください!
アセスメントするときに必要な「発達的視点」と「療育的視点」について学びたい、「職人芸」ではなく「専門職」としてどうあるべきかを学びたい方にもおすすめの一冊です。詳しく解説してくれています。