こんな悩みを解決します。
本記事では、感覚統合の効果がある理由や実際の効果、また効果が出ない時の工夫をまとめています。
感覚統合は効果なしなのか【結論:あります】
結論は「あり」です。
感覚統合に効果があることは証明されている
「発達障害児への支援−感覚・運動アプローチを中心に−」に「効果あり」との研究結果が書かれていました。
内容をざっくりまとめると…
ということ。
感覚統合の効果で2つの面で改善する
2,視覚運動機能
JMAPという発達検査では4つの項目の有意性が見られたそうです。① 基礎能力② 協応性③ 非言語能力④ 複合能力。要するに協調運動と視覚運動能力の発達をより促せるということでした。
効果1 協調運動
協調運動とは、諸種の別々の動作を1つにまとめる運動を言う。たとえば、縄跳びは手で縄を回しながら、タイミング良く飛ぶという協調運動であり、かなり高度な協調運動である。
効果2 視覚運動能力
視覚と運動を統合する能力。
つまり、「縄跳び」でいうと、回る縄を【見る(視覚)】、【跳ぶ(運動)】という情報を瞬時に処理する能力。
感覚統合をすると、この2つの能力が伸びるということです。
✓ もともと感覚統合は効果がないと言われていた
日本自閉症協会の掲示板にこのような投稿がありました。
> ① 感覚統合療法は、効果を示す明確な証拠を残せなかったので、他の先進国ではとっくの昔にすたれてる。
すたてれいるかどうかは知りませんが、日本と比べて批判の声が大きいことは確かで、日本は遅れています。例えば日経サイエンス2011年1月号では、自閉症の代替医療について米国のジャーナリストが寄稿した記事が載っていますが、キレート療法などと並んで「怪しげな治療法」として列挙されています。
> ② とともに、動作やABAと違って、子どもの動きや行動に支援者の手で強い刺激を与えたり行動介入するわけではないから、感覚統合療法では、圧倒的な効果もないかわりに決定的なミスを犯すこともない。だから初心者も取り組みやすいので広がっていて子どもも好む遊具遊びに、理屈ちょっとかじっただけでも気楽に実践できる。体に少しの負荷をかけたり遊具遊びなどで子どもの笑顔は見られるが、それだけのことであり、療法としての効果はいまもって全く不明。
療法としての効果が不明というのは本当です。
> ③ もし効果があるというなら、脳や神経系が出来上がる5歳くらいまでであり、特別支援学校でも小学部以降は無意味。
う~ん、どうなんでしょう。いずれにしても幼児でも効果は不明です。
> ④ 知的な活動をさせず感覚運動ばかりに没頭してたら、覚醒レベルを逆に下げ、知的発達の機会を逸してしまう。
ありうる話ですが、その主張も特に根拠がないのでは?「覚醒レベル」というものの定義や測定方法が不明です。要はバランスではないかと。ゲームだろうとスポーツだろうと勉強だろうとそればかり没頭していたら何らかの弊害がありそうなので。
> ⑤ 感覚は、触覚・固有覚・前庭覚などと頭の中を見てきたように言ってるが、最新の神経科学・医学と矛盾や齟齬が起きている。感覚統合療法は科学ではなく疑似科学だ。
これは事実です。そもそも先端の神経科学においても、「こうすれば脳に良い」とか「脳に悪い」などと言い切れるものはありません。言い切ってしまっているのは一括りに疑似科学的と言っていいでしょう。
> えっ!!??としたら、特別支援学校にいっぱいある、トランポリンやボ-ルプ-ル、スイングホ-スなどの高額な感覚遊具もほとんど意味がない??
遊びとして楽しむ分にはいいのではないでしょうか。それに具体的な効果を期待しすぎるのは問題ですけれど。
出典:日本自閉症協会
ただこれは、2011年時点での投稿。
感覚統合療法の研究結果が出たのが2014年なので、気にしなくて良さそう。
今では感覚統合に関する本がたくさん出ているくらいなので「効果なし」ではないですね。
※感覚統合で有名な木村順さんの『育てにくい子にはわけがある−感覚統合が教えてくれたもの−』の本はおすすめ。Amazonでは★4.3と高評価。感覚統合の基礎が学べる一冊です。
感覚統合 トランポリンの効果は「落ち着き」と「姿勢保持」
感覚統合の遊びでよく出てくるのがまずトランポリン。
2.固有覚
前庭覚は、自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚。
固有覚は、自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚。
出典:LITALICO発達ナビ
✓ トランポリンのどの場面で前庭覚・固有覚を使ってる?
前庭覚…落ちないようにバランスを取りながら跳ぶ。
これを自然に行えるのがトランポリンです。
常に動き回ったり、くるくる回ったりするのは、強い感覚刺激を体に入れることで「心地よさ」を感じているかも知れません。
そのため、もしそのような落ち着きのない行動が見られた場合は、トランポリンで前庭覚、固有覚への刺激を入れてあげましょう。
感覚統合 ボールプールの効果は「触覚の刺激」にある
ボールプールもトランポリンに続き、養護学校や療育施設でもよく使われているくらい代表的な遊びです。
触覚は、全身の皮ふや粘膜に、そのセンサーがはりめぐらされている感覚
出典:木村 順. 育てにくい子にはわけがある 感覚統合が教えてくれたもの
要するに肌に触れる感覚ということですね。
✓ ボールプールのどの場面で触覚を使ってる?
これを楽しみながら感覚を刺激できます。
手をつなぐのを嫌がったり、口を拭かれるのを嫌がるのは触覚が人より敏感に感じているからかも知れません。
そのため、もしそのような肌に触れる感覚を極度に嫌がる姿が見られた場合は、楽しんでできる触覚遊びを取り入れてあげましょう。
「慣れさせる」でも「がまんさせる」でも「がんばらせる」でも「くりかえさせる」でもない出典:木村 順. 育てにくい子にはわけがある 感覚統合が教えてくれたもの
感覚統合で効果がでない場合は4つの工夫をしよう
感覚統合をしても効果が出ない場合もあるため、そのときに役立つ3つの工夫です。
2.不安を軽減する
3.注意をそらして過敏反応を抑える
4.過敏に反応する刺激を能動的に体験する
順番にみていきましょう。
不快刺激を遠ざける
「聴覚過敏」があるのであれば、イヤーマフをつけるなどです。上記には出てこない感覚ではあるが聴覚も感覚の一つ。
聴覚過敏は、大抵の人が十分我慢できる音を苦痛を伴う異常な音として経験することである。
出典:Wikipedia
ノイズキャンセリングとして、このような不快防止グッズを使う方法があります。
不安を軽減する
刺激が入る際の状況がわかるようにするということ。
初めてのことやわからないものに対して強い不安を抱くのも自閉症児の特徴。事前に写真やスケジュールを見せたり知らせるなど、見通しを持てるようにすると不安な気持ちが軽くなります。
不快刺激から注意をそらす
他の刺激に集中すると不快刺激が気にならなくなる場合があります。
ベタベタしたものが嫌いな女の子の事例。
「ゼリーをすくう」という固有覚に集中していて、ゼリーが付いても気にしないで遊んでいた事がありました。
過敏反応する感覚刺激を能動的に体験する
歯磨きをされるのが苦手であれば、子ども自身に歯ブラシを持たせ,その手を大人が動かすという方法です。
これは「自分で自分をこちょこちょしても、くすぐったくない原理」を利用しています。
整理します。
感覚統合の効果が出ない時の4つの工夫は4つ。
1.不快刺激を遠ざける
2.不安を軽減する
3.注意をそらして過敏反応を抑える
4.過敏に反応する刺激を能動的に体験する
です。
「自分勝手」や「わがまま」ではないことは知っておこう
感覚統合の効果についてお話しました。
感覚の過敏さや鈍感さは脳にあるということ。決して「自分勝手」や「わがまま」、「怠け」や「やる気」のという気持ちの問題ではない事を知っておくべきです。
感覚統合をすることにより改善していく事例もあるので、脳の状態に見合った遊びを取り入れ、感覚を刺激してあげましょう!