映画の感想【500ページの夢の束】自閉症を理解するための映画です【文部科学省特別選定】

どうも!ホントは『427ページの夢の束』だと知ったこうりんまるです。
(キリのいい500にしたようです。)

 

自閉症を理解するための教材として文部科学省特別選定もされている映画。僕は発達障害児に携わる仕事をしていますが、その目線で映画を観てみました。療育者として解説していきます!

映画『500ページの夢の束』のあらすじ

500ページの脚本を届けるためハリウッドを目指す旅の中で、少しずつ変わっていく少女の姿を描いたハートフルストーリー。自閉症のウェンディは「スター・トレック」が大好きで、自分なりの「スター・トレック」の脚本を書くことが趣味だった。

出典:500ページの夢の束:作品情報−映画.com

自閉症の女の子が旅に出ますが、その旅の中でいろいろな問題が起きます。しかし、持ち前の能力で問題を乗り越えながら500ページの脚本をハリウッドに届ける物語です。

 

いろいろな人を巻き込んだ旅ですが、まさにハートフルストーリーと言える映画でしょう。

映画『500ページの夢の束』の登場人物・キャスト

ウェンディ(ダコダ・ファニング)

出典:500ページの夢の束|シネマズPLUS

✓ 劇中はどんな人??

自閉症スペクトラムという発達障害のある主人公。オードリーという姉に持っています。

普段は障害者の自立支援施設で暮らしていてセーターを手編みするのがとても速く得意。『スター・トレック』に関する情報はすべて記憶しているくらい大好きな女の子。

 

✓ 女優について

主役のウェンディ役には「アメリカ最強の女優」に選ばれたダコダ・ファニングさん。難しい役を彼女はならではの解釈で演じている事でステレオタイプ(多くの人が持つようなイメージ)な自閉症のキャラではないと評判です。

スコッティ(トニ・コレット)

出典:500ページの夢の束|シネマズPLUS

✓ 劇中はどんな人??

ウェンディを支えるソーシャルワーカー(生活相談員)のスコッティ。ウェンディを我が子のように思うよき理解者です。

施設の長のため忙しく息子とはあまり関係性は良くない様子。しかし行方不明になったウェンディを寝る間を惜しんで、息子も一緒に探します。最後には息子とも関係修復です。

 

✓ 女優について

『シックス・センス』という大ヒット作に出演していて、『ミュリエルの結婚』『リトル・ミス・サンシャイン』ではゴールデングローブ賞主演女優賞しています。
ただ『アイ,トーニャ』で鬼母を演じたときのアリソン・ジャネイに見えてしまい気が気でないという人もいました。

オードリー(アリス・イブ)

出典:500ページの夢の束|シネマズPLUS

✓ 劇中はどんな人??

主人公ウェンディの姉であるオードリー。旦那と子どもと3人暮らし。妹は自閉症という障害がある上にかんしゃく持ちのため一緒に住むことを拒んでいる。
ただ一人で旅をした妹の姿を間近で見たことで考えが変わります。姉妹愛が感じられるのではないでしょうか。

 

✓ 女優について

代表作は『SEX AND THE CITY』。ブロードウェイにも進出している女優です。

映画『500ページの夢の束』の3つの感想

見どころはやっぱり自閉症の女の子の旅

1、その場に合わせて考え、自分で判断しながら動けるころがすごい

2、自閉症なんて関係ないって思わせる旅。「好きなことがある」って強いよね

3、愛されるキャラクターが彼女を応援させる

順番にお話していきます。

✓その場に合わせて考え自分で判断しながら動けるところがすごい

「頭いいな!」と思ったシーンが2つ。

お金が無くてバスに乗れなかった時と終盤の「郵送じゃなきゃ受け取れない」と突き返された時の対処法。

まさか荷物を乗せるところに乗るとは思いもしなかったし、名前を知らないなら「勝手に投函しちゃえ!」と発想できるのが天才的でしたね。

問題を解決する力があるば、障害も乗り越えていけますね!

✓自閉症なんて関係ないって思わせる旅。「好きなことがある」って強いよね

「脚本を絶対に届ける」という気持ちが全面にでていたなと感じましたね。

慣れない場所に強い不安感を感じていたはずなのに、一人で旅に出る決心をしたのも脚本があったから。

「好きなことがある」って強いよね。

✓愛されるキャラクターが彼女を応援させる

なぜか「なんとかしてでも脚本を届けてほしい」と自分も応援しながら映画を見ていました。

きっと愛されるキャラクターだからかなと思ったのです。

あなたはウェンディがなぜ愛されるキャラだと考えますか?
僕はこの2つです。
1、どんな手を使ってでも脚本を届けるという彼女の一貫性
2、諦めず前に進み続ける姿

 

どんな手を使ってでも脚本を届けるという一貫性

施設の犬も一緒に旅をしていましたが、初っ端から犬禁止なバスなのに隠して乗ったり、事故にあって安静にしなきゃいけないのに脚本の期限に間に合わないからと言って病院を抜け出したり…。

でも、脚本を届けたいがためにやっていること。本気度が次第に伝わりますね。

諦めず前に進み続ける姿

「お金を盗まれた時」はどうなるのかと思いましたね。主人公のウェンディも迷子になったと電話で助けを求めようとしていましたし。

でも、そこを踏みとどまり、自力で頑張ろうと再び歩き始めた姿を見た時、もう彼女のファンになっていました。

障害があるように見えないが、きちんと自閉症の特性も描かれていた

自閉症とは発達障害の一種で「社会的コミュニケーションの障害」と「限定的な行動・興味・反復行動」の2つの領域からなっています。

社会的コミュニケーションの障害を表現している具体的な場面

ASD(自閉症)、DSM-Vという最新の診断基準では、

・相互の対人的・情緒関係の欠如
・対人的相互反応で非言語的コミュニケーションを用いることの欠如
・人間関係を発展させ、維持し、理解することの欠如
(Wikipediaより引用。より詳しい診断基準はこちら

という項目で診断されます。これらすべてに当てはまるのが診断の第一段階です。

1、スコッティと目線を合わせることを拒んだ
→非言語的コミュニケーションを用いることの欠如
2、母子(お金を盗む人)との一方的な会話
→相互の対人関係の欠如
3、そっけない同僚との関わり方
→人間関係を理解することの欠如

序盤で「3秒だけ私の目を見て」とスコッティがいいますが「できない」と答えます。これは非言語的コミュニケーションを用いることの欠如ではないかと考えられます。

さらに旅中にあった母子(お金盗む人)との会話では、唐突に「私はルビー(甥っ子)の叔母。マディに(母が抱いている子)はいるの?」と聞きます。一方的な会話であるのが見受けられ相互の対人関係の欠如を表しています。

また、仕事先の同僚に話しかけられても、目も合わせず必要最低限の返事しかしないことから人間関係を発展させ、維持し、理解することの欠如とも考えられます。

 

限定的な行動・興味・反復行動の具体的な場面

これらは基準が4つあり、2つを満たしていればASDと診断されます。

1、ペンを並べる
常同的または反復的な物の使用
2、毎日のルーティンや服が決まっている
同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり
3、スター・トレックに対する好き度が異常
→強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味
4、常に耳を塞げるようにイヤホンがある
感覚刺激に対する過敏さ

ウェンディの場合はすべてに当てはまる行動が見受けられます。

4の感覚過敏が特に現れていたのが、道路で耳をふさぐシーン。過敏さを持っている場合は、人より音が大きく聞こえ騒音に感じるようです。

また「家に帰りたい!」とかんしゃくを起こしましたが、気持ちのコントロールが難しいためです。発達障害のある子どもたちは、ストレスや興奮を減らす自己調整を行うことが難しい傾向にあると言われています。そのストレスを蓄積し、不満や怒りが爆発したときに癇癪が起こるそうです。

スター・トレックを知っていたら、もっと楽しめたんだろうな

「PLEASE STAND BY(そのまま待機)」や挨拶に使っていた笛。ポスターの「長寿と繁栄を」という意味の手の形だったりと、スター・トレックファンであれば「あーこれね!」と思えるネタが他にも出てきましたが…。

ここで僕がいいたいのは

ウェンディとスポックには強い関連性がある
ということです。

 

✓スポックも同じ悩みを持っていた

スポックは地球人とバルカン人のハーフで、バルカン人は非常に感情的で好戦的な種族のようです。

地球人の血が流れているスポックは感情をうまく表に出せず、バルカン星では「感情反応を起こさないのはヴァルカン人でない」といじめられます。

つまり、周囲とうまくやっていけない(コミュニケーションの悩み)があることから自閉症の傾向があるということですね。

✓スポックも自ら一歩踏み出している

ヴァルカン星に留まることに不安を感じたのか、スポックは宇宙船隊への入隊を希望する。スポックを科学者にしたい父との話し合いは決裂し、とうとうスポックは自分の希望する将来へ足を進めた。

ウェンディも決まったルーティンの生活から抜け出し、自ら旅に出ましたね。

 

このようにスター・トレックを知っていれば、きっともっと楽しめたんだろうと思いました。

でも知らなくても十分に楽しめますね。

最後に

主人公ウェンディの障害度合いでいうと軽い方かなと思います。

ただ問題はそこではなく、自閉症など関係なく過ごすためには周りの助けと、障害をカバーできる環境づくり。監督も言っている「自閉症はあくまで二次的な問題」。要するに社会が障害を作り出しているということ。

そんな社会に負けず、自分の居場所を探し続ける主人公を観るだけで元気をもらえます。